資本余剰金を原資とした配当の詳細を解説。利益剰余金以外から行う理由とは?源泉徴収なく、税金の取扱いの違いも。取得価額の調整とは?

銀行に預金していてもほとんど金利がつかない中、株式投資での配当はとても魅力的で配当目当てに投資する人も多いでしょう。

企業も株主還元対策として積極的に配当する傾向がありますが、実は配当にも2種類あることをご存知でしょうか?

ここでは配当の種類についてみていきたいと思います。

⇒【配当の詳細を解説

配当の原資は利益剰余金?赤字決算だと配当はできないのか? 

配当は企業の利益の一部を株主に還元するのが一般的なため、配当の原資は利益剰余金となります。

そのため利益の積み上げが無いと、企業は配当ができなくなってしまいます。

では、想定外に赤字となってしまい、利益剰余金が無いと配当はできないのでしょうか?

実は利益剰余金ではなく、資本剰余金を原資として配当することが可能なのです。

これがあまり知られていませんが、もう1つの配当金で、件数は少ないですが、資本剰余金を原資とした配当を行う企業も少しずつ増えてきています。

⇒【損益計算書の見方を解説

⇒【貸借対照表の見方を解説

資本剰余金を原資として配当する理由とは?資本準備金と資本金の違いとは? 

なぜ企業は資本剰余金を原資として配当を行うのでしょうか?

それは配当が重要な株主還元対策であり、継続的に配当を行っている企業が、想定外に赤字となってしまった際に、やむを得ず資本剰余金から配当を行う場合があります。

継続的に配当を行っていた企業が配当を行わないと、企業は株式の人気が下がってしまうことを懸念し、このような配当を行うことがあります。

では、資本剰余金とは何なのでしょうか?

資本準備金とは、株主が提供した資金の内、資本金に組み込まれなかったものになります。

大まかには資本金とあまり大差はないので、資本金の一部として理解して頂ければよいと思います。

会社法上、企業は株主が提供した資金のうち、半分までは資本金ではなく資本準備金とすることができ、資本準備金は資本金へ振り替えることが可能となっています。

⇒【自己資本比率、流動比率、当座比率の見方を解説

⇒【固定比率、固定長期適合率の見方を解説

資本剰余金を原資とした配当の税務上の違いとは?源泉徴収がなく、みなし譲渡損益とは?取得価額の調整とは? 

通常、利益剰余金を原資とした配当の場合、20.315%の税金が源泉徴収されます。

しかし、資本剰余金を原資とした配当の場合は源泉徴収が行われません。

この場合、株主は出資金を減額したとみなされ、株式の取得価額の調整を行い、その差額がみなし譲渡損益となり課税対象となります。

例えば、企業が純資産の10%分に相当する資本準備金からの配当を行った場合、株主の取得価額も10%減額する必要があります。

1株当たりの配当金額が100円とし、取得原価2,000円の株式を保有していた場合は、10%の取得価額調整で▲200円、配当で+100円となるため、100円のみなし譲渡損が発生します。

一方で取得原価が500円の株式を保有していた場合は、10%の取得価額調整で▲50円、配当で+100円となるため、50円のみなし譲渡益が発生します。

⇒【配当に対する税金を解説

⇒【株式投資の税金について解説

まとめ 

配当には2種類あること理解して頂けたでしょうか?

資本剰余金を原資にした配当はあまりありませんが、発生した場合には税務上の取扱いも異なるため、自分がもらう配当はどちらに該当するのか確認するようにしてください。

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