「TOB」とは特定の企業の株式を大量に購入するために手法です。企業買収などのニュースで「TOB]という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。株式投資行っていると、保有している銘柄が「TOB」の対象になる可能性もあり、どのような目的で「TOB」を仕掛けているのか、また「TOB」された銘柄はどのような値動きをするのかを把握しておくことは重要です。
ここでは「TOB」のメリットやデメリット、株価の動きの特徴について解説していきたいと思います。
目次
「TOB」とは?目的は?
「TOB」とは、期間・価格・株数を宣言した上で、対象企業の株式を証券取引所を通さずに大量に買い付けすることです。英語の「Take-Over Bid」の略で、日本語では「株式公開買付」と言います。
「TOB」を行う主な目的は、対象企業の買収や子会社化など経営権を取得することがほとんどですが、株主還元対策としての自社株買いなどでも「TOB]が行われることはあります。株式の購入は東京証券取引所(東証)などを通じて行うことができますが、なぜ「TOB」は証券取引所を通さずに行うのでしょうか?
その理由は、企業買収で発行済み株式の過半数以上を取得しようとする場合、証券取引所で買付けをするとなると時間を要し価格の見通しもつかないことからです。「TOB」では前述の通り、期間・価格・株数を宣言した上で行いますので、仕掛ける企業にとっては見通しが立ちやすくなります。もちろん「TOB」は毎回成功するとは限りませんが、予定していた価格以上で購入することが無いというのは大きなメリットです。
「TOB」する側とされる側のメリットとは?
ここでは「TOB」のメリットを、する側とされる側それぞれでみていきたいと思います。
「TOB」する側のメリット
① 時間をかけずに大量の株式を買付けできる
証券市場で大量の買付けを行うと時間を要してしまいますが、「TOB」ではより短期間で買付けできる可能性があります。
② 買付価格が決まっているため、見通しを立てやすい
「TOB」では買付価格を公表して応募してもらうため、成功した場合の総額を試算することができます。証券取引所で株式を大量に買付けしようとすると価格は上昇してしまう可能性があり、購入価格の見通しを立てるのは難しくなってしまいます。もちろん結果的に安く購入できる可能性はあるかもしれませんが、予算以上の価格で購入してしまうリスクが無くなります。
③ 予定株数まで達しなかったらキャンセルできる
「TOB」では予定株数まで達しなかったらキャンセルすることができるため、中途半端に株式を取得するということがなくなります。経営権を握るために過半数を取得しようとしたのに、それ以下の株式数を購入するメリットはありません。
「TOB」される側のメリット
① 市場価格より高く株式を売却できる
「TOB」される側は現在の株価よりも高値でないと応じる意味がないため、高く売却することができます(あくまで現時点の株価と「TOB」価格との比較であり、将来の株はどうなるかはわかりません)。
TOB(株式公開買付)する側とされる側のデメリットとは?
「TOB」のデメリットもみていきたいと思います。
「TOB」する側のデメリット
① 買付価格を現在の市場価格より高く設定する必要がある
「TOB」に応じてもらうために、「TOB」される側のメリットで説明した通り、現在の株価より高く買付価格を設定する必要があります。ただ証券取引所で大量に株式を購入する場合にも、価格は上昇してしまうので、結果的には「TOB」をすることによって安く株式を取得できるという可能性もあります(両方のケースを比較することはできないため、どちらが良かったかはわかりません)。
② 「TOB」対象企業に防衛策を取られる可能性がある
対象企業が「TOB」に反対の場合、さまざまな買収防衛策を取られる可能性があります。
「TOB」される側のデメリット
① 買収防衛策が取られた場合に損をする可能性がある
「TOB」対象企業が、新株の発行のような買収防衛策を取った場合には、既存株主は損を被る可能性があります(株数が多くなれば1株あたりの利益が少なくなるため)。
② 「TOB」が一部買付の場合には売却できない可能性がある
一部買付のTOBの場合(詳細後述)に応じた株数が多ければ、抽選になり落選することがあります。その場合は手間や時間を要した上に、株式を販売できないという機会損失が発生する可能性があります。
「TOB」された場合の株価の値動きは?
株式を保有している会社が「TOB」された場合、株価はどのような値動きになるか傾向を知っておくと、実際「TOB」が起こった際には慌てずに対応することができます。「TOB」には「全部買付」と「一部買付」の2種類があり、それぞれのケースで値動きは異なります。
全部買付の「TOB」の場合
全部買付の場合は「TOB」に応募すれば買付されるのがほぼ確実(可能性は少ないながらTOBがキャンセルとなることもあります)なため、株価もTOBの価格に限りなく近くなる傾向があります。そのため全部買付の場合にはTOBに応じずに、株価を見ながら通常通り証券取引所で販売してもあまり価格は変わらないことが多いです。
一部買付の「TOB」の場合
一部買付の場合は「TOB」に応募しても買付されるかわからないため、全部買付に比べると株価の上昇率は低くなります。また、「TOB」終了後には株価は元の水準まで戻ることがありますので、「TOB」が発表された場合には、どのように対応するのかを慎重に検討する必要があります。
まとめ
①「TOB」とは、主に企業買収の際に用いられる手法で、証券取引所を通さずに株式を大量に買付します。
②「TOB」する側は株式取得の見通しが立てやすい、される側は現在の価格より高く売却できるメリットがあります。
③「TOB」する側は市場価格より高く購入しなければならない上に買収防衛策を取られる可能性が、される側は買収防衛策を取られた場合には損失を被ったり、「TOB」で売却できない可能性がデメリットとしてあります。
④「TOB」には「全部買付」と「一部買付」があり、「全部買付」の場合には株価は「TOB」価格に近付きやすく、「一部買付」の場合にはそれより株価上昇率は低くなります。
「TOB」は日本でも積極的に用いられるようになっていますので、覚えておくと良いでしょう。
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