日本の上場企業は以前から、取引関係のある企業との間で相互に株式を保有する「株式持合い」が行われてきましたが、最近はこの株式持合いを解消する動きが多くみられています。
ここでは株式持合い解消の意図や具体的事例、株価への影響などを見ていきたいと思います。
目次
株式持合い比率とは?以前は30%以上だったのが、最近は10%程度まで下落。解消はさらに進む見込み。
野村證券が集計する日本株式市場の時価総額に占める株式持合い比率は、2017年3月末時点で10.1%となっています。
1990年頃には30%を超えていた株式持ち合い比率ですが、ここ最近は8年連続で下落しています。
2018年3月末時点の数字はまだ出ていませんが、各社の売買動向から判断すると株式持合い比率は過去最低を更新したとの見方が強く、初の10%割れも見えてきている状況です。
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株式持合いを解消する理由や意図とは?企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード、CGコード)改定や米国会計基準への変更。
株式持合いを解消する理由とは何なのでしょうか?
主に2つの理由が考えられます。
1つは2018年6月に改定される企業統治指針で、株式持合いに関する方針がより厳しく求められることになりました。
もう1つは米国会計基準を採用する企業が増えたことです。
米国会計基準を採用する企業は2017年12月以降の新たな会計年度から、投資有価証券の評価損益が決算に影響を与えるようになります。
これにより持ち合い株の株価次第で毎年の利益が変動することになるため、企業は株式持合い解消へ向かう要因となっています。
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株式持ち合い解消の具体的な事例とは?日本瓦斯(ガス)、資生堂、旭化成、富士通など。株価への影響をチャートから確認。
8174 日本瓦斯(ガス)は2018年4月9日のプレスリリースにおいて、持合い株式(政策保有株式)縮減完了のお知らせ、を発表しました。
日本瓦斯はコーポレートガバナンス・コードに則り、金融機関が保有する約4.5%の同社株式持ち合いを解消したとのことでした。
以下は日本瓦斯の日足チャートです。
株式持ち合いが好感されたのかは不明ですが、発表翌日の2018年4月10日には5,590円の高値を付けています。
その他には資生堂や旭化成が金融機関の株式売却、富士通と富士電機はそれぞれの保有株式売却を行うなど、株式持ち合い解消に向けた動きは加速しています。
以前のように株式持ち合いがあるからビジネスを行うという考え方は無くなりつつあり、また株主の目が厳しくなっている状況では、資金を効率的に使うことが求められていることも、解消に向かう要因となっています。
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まとめ
株式持ち合いは日本特有の文化的なもので、海外企業ではほとんど見られません。
日本企業も外国人投資家の割合が増えるなど、物言う株主が増えて、説明のつかない資金の使い方には厳しい意見が出るようになりました。
この株式持ち合い解消の動きが、企業業績改善の要因となり、最終的には株価上昇につながることを期待しています。
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