スルガ銀行倒産、静岡銀行が買収・統合の可能性は?不動産向け不適切融資1兆円規模との報道を受け、株価はストップ安で年初来安値更新。貸倒引当金積み増しで業績への影響は?

スルガ銀行の不適切融資問題は、新たな局面を迎えています。

第三者委員会の調査によれば、スルガ銀行の不適切融資金額は1兆円規模にのぼると報道され、今後スルガ銀行が財務超過・倒産の可能性が現実味を帯びてきました。

金融庁も何らかの処分を下すことが確実となり、収益性が低く、銀行数の多い地銀業界の再編を後押ししていくかもしれません。

ここではスルガ銀行倒産や買収の可能性、株価の動きについてみていきたいと思います。

⇒【スルガ銀行株価はどこまで下落するのか?

スルガ銀行の不動産向け不適切融資は1兆円規模?第三者委員会の調査概要。 

日本経済新聞の報道によれば、スルガ銀行の融資総額は3兆1,500億円で、そのうち不動産向け融資が2兆円と大部分を占めます。

そして第三者委員会が調査中の不適切融資の総額は1兆円規模にのぼるとみられ、不動産融資の約半数で書類の改ざんによる融資が実行されていたことになります。

1件あたりの不動産融資金額が1億円とすると、1万人のサラリーマンに対して不適切融資を行っていた計算。

スルガ銀行はプレスリーリスで第三者委員会からの報告は受けておらず、内容は把握していないとしているが、今後の調査内容次第では貸倒引当金の積み増しについては否定しておらず、今後業績に大きな影響を与える可能性が高そうです。

⇒【きらぼし銀行、現金横領と殺人事件の不祥事。その詳細とは?

スルガ銀行決算赤字転落、債務超過となる可能性高い。 

スルガ銀行は2018年3月期に155億円の貸倒引当金の計上を行いましたが、不適切融資が1兆円規模となれば、これをはるかに上回る金額を計上する可能性が出てきています。

スルガ銀行の2019年3月期見通しの当期純利益は250億円となっていますが、大幅な赤字に転落する可能性は限りなく高そうです。

またスルガ銀行の2018年6月末時点での純資産は3,471億円であり、債務超過に転落する可能性も否定できません。

スマートデイズのシェアハウス「かぼちゃの馬車」向けの融資は1,000億円程度であったため、万が一全てが焦げ付いても債務超過になることはありませんでしたが、その10倍の規模となる金額が不適切に融資されていたとなると、状況は大きく変わってきます。

⇒【スルガ銀行、調査報告書の決算への影響

静岡銀行がスルガ銀行を買収する可能性は?時価総額は? 

現時点での状況を考えると、今後スルガ銀行が単独で経営を再建できるのか疑問が残ります。

銀行業界全体として低金利の影響を受けて収益が低下している中、スルガ銀行は新たなビジネスモデルを開拓して、地方銀行が目指すべきモデルと言われてきた時もありましたが、その実態は不適切融資という、ずさんなものでした。

今後金融庁は相当重い行政処分を出す可能性が高く、スルガ銀行を他の地方銀行と統合させるように動いていくかもしれません。

そうなると最初に候補に挙がるのは、同じく静岡県に本社を置く静岡銀行。

静岡銀行がスルガ銀行の買収に興味を示すかはわかりませんが、このままスルガ銀行の株価が下落し続ければ、もしかしたら可能性はあるかもしれません。

2018年8月22日終了時点でのスルガ銀行の時価総額は約1,439億円。

静岡銀行の時価総額は5,886億円と規模的には買収の対象となってもおかしくはないでしょう。

ここまで不良債権を抱えているスルガ銀行であれば、買収金額はもっと下がりそうな気もします。

⇒【M&Aの詳細を解説


  

スルガ銀行年初来安値更新も、不適切融資1兆円報道でさらに下落する可能性高い。 

スルガ銀行の2018年8月22日の株価は、ストップ安となる前日比▲150円(▲19.5%)の620円で取引を終了し、不適切融資報道の影響が出ています。以下はスルガ銀行の日足チャートです。

2018年のスルガ銀行の株価は完璧な右肩下がりの下降トレンド。本日のストップ安で年初来安値を更新しました。

次の目途となる安値はなく、また1兆円規模の不適切融資というインパクトの大きい報道がされたことから、株価はここから大幅に下落していく可能性は十分にありそうです。

今後も値動きの荒い展開が続く可能性が高く、トレードする場合には注意が必要です。

⇒【テンバガーの詳細をわかりやすく解説

スルガ銀行は抱き合わせ融資も行っていた。高金利にも関わらず延滞率は住宅ローンと同水準。 

スルガ銀行の不動産向け融資の金利は4.5%(首都圏では3.5%のケースも)が一般的ですが、不動産融資と一緒に8.0%を超える高金利のフリーローンを貸出ししているケースもありました。

このような「抱き合わせ融資・販売」は優越的地位の乱用として、独占禁止法で抵触する行為ではありますが、スルガ銀行は実質的にフリーローンが不動産向け融資を実行するための条件という形で提案してきます。

フリーローンの他にも、数百万円単位の定期預金、生命保険などの加入が条件となっていることもあり、実績がボーナスに直結する給与体系がこのような事態を起こしていたと思われます。

高金利の不動産向け融資やフリーローンによって、スルガ銀行の有担保融資の貸出金利は一時5.9%までに上昇しましたが、驚くべきことに2018年3月末時点での延滞率は0.10%と住宅ローン並みの低さです。

これはスルガ銀行の不動産向け融資が、医者や弁護士、大手一部上場企業の社員などの高属性に絞って融資していたことが、高金利低延滞率というすばらしいモデルを確立していたのだと思います。

今後スルガ銀行がどの程度貸倒引当金を計上するかは、この延滞率次第になってくると思われます。シェアハウス不正融資の影響で延滞率は0.10%から大幅に上昇すると思われますが、どの程度まで上昇しているのか注目です。

⇒【スルガ銀行不適切融資は1兆円では済まない!?

スルガ銀行の個人向け不動産融資の割合、延滞率や毀損率は? 

スルガ銀行の2018年3月末の決算資料によると、貸出金残高は3兆2,459億円。うち個人ローンが2兆9,259億円と90.1%を占め、有担保ローンが2兆6,545億円、無担保ローンが2,714億円となっています。

有担保ローンが住宅ローンや不動産向けローン、無担保ローンが8%以上の高金利のフリーローンなどに相当します。

有担保ローンの平均貸出金利は3.55%、延滞率(3ヶ月以上延滞債権÷ローン残高)は0.10%、毀損率(デフォルト)は0.27%と驚異的な低さとなっています。

無担保ローンの平均貸出機金利は9.94%、延滞率0.13%、毀損率は0.46%と有担保よりは高いものの、金利から考えると低い割合です。

スルガ銀行全体の貸出金利は3.52%で、他の銀行が軒並み1%前後の中ではスルガ銀行の金利の高さは際立っています。

スルガ銀行、不動産融資禁止となれば収益率は大幅に低下。買収や合併に興味を占めす銀行はいるのか? 

スルガ銀行は個人向けの不動産融資を中心に、高収益なビジネスモデルを確立し、業績を大きく伸ばしてきましたが、今回の不適切融資問題によって、今後不動産向け融資が禁止となると、スルガ銀行の収益モデルはどうなるのでしょうか?

スルガ銀行の貸出先は90%が個人であり、低金利の住宅ローンのみが残る形となれば、スルガ銀行の収益性は他の地銀と同水準となり、経営状況は厳しくなることが確実でしょう。

既存の融資先としては高金利の融資は残るとは思いますが、その大部分が書類改ざんによる不適切融資となれば、リスクは相応に高く、静岡銀行をはじめとした他の銀行が買収や合併に興味を示すかは疑問が残ります。

スルガ銀行倒産、静岡銀行が買収・統合の可能性まとめ 

第三者委員会のよる調査結果はまもなく発表されると思いますが、スルガ銀行は2018年9月末決算に向けて、どの程度の貸倒引当金を計上するのか注目が集まります。

金額が大きければ債務超過に陥り、静岡銀行をはじめとした他の銀行との合併や統合の可能性が出てくるかもしれません。

新規材料が次から次へと出てくるスルガ銀行から、目が離せません。

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