東証一部に上場する不動産大手のレオパレス21(以下レオパレス)は2019年2月7日、360億円の特別損失を計上したことを発表しました。特別損失を計上した理由は、同社が建築したアパートに「界壁」が無い、あるいは十分ではなかったため、その補修費用が発生するためでした。
この発表後、株価はストップ安が続いており、最悪のケースとしてレオパレスの倒産を考える人もいるでしょう。現預金及び自己資本を考えれば短期的には倒産する可能性は低いとは思いますが、アパート補修費用、立ち退き費用、今回の一連の報道で入居者やアパート建築数の減少、アパートオーナーからの訴訟、そして公募増資に対する損害賠償の可能性など、今後も業績に大きく影響を与えそうな案件が多くあります。
ここではその詳細についてみていきたいと思います。
現預金及び自己資本
レオパレスの2019年3月期見通しは、当期純損失が▲373億円~▲391億円となっています。大幅な赤字拡大によってレオパレスの倒産を不安視する声はありますが、レオパレスは2018年12月末時点で現預金(連結)892億円、自己資本(連結)は1,069億円(自己資本比率35.2%)と十分な水準になるため、倒産の可能性は無いという趣旨のコメントを発表しています。
現時点での現預金及び自己資本を考えれば、今回の特別損失計上が倒産に直結することはなさそうです。
退去費用の見積もりは甘い?
レオパレスの発表によると、建築基準法違反の物件に入居しているのは14,443人であり、早急に改善が必要な641棟に住む7,782人は2019年3月末までに退去を依頼するとしています。
レオパレスが入居者に対して送った文書によると、退去時の費用は免除、また転居に伴う引っ越し費用などもレオパレス負担となっています。ただ通常、法的に立ち退きを依頼する場合には、半年前の告知と立退料を支払うこととなるため、レオパレスの費用負担は現在の見積りよりも増える可能性があるでしょう。Twitterでは以下のようにツイートしている人もいます。
レオパレス問題で立ち退きを要請されてる人。
今回の場合
・家賃5ヶ月分をもらう
・引っ越しは5月
・家具はサービスこのぐらいが妥当なライン。
法律で賃貸人から退去をお願いする場合、半年前の告知と立退き料が必要や。嘘をついて立ち退き料を支払わないようにしようとしてくるから注意やで^_^
— 両@リベ大 学長 (@freelife_blog) February 12, 2019
レオパレスの主力事業
レオパレスの決算を見ると、「賃貸事業」「開発事業」「シルバー事業」「ホテルリゾート事業」の4つのセグメントがあり、2018年3月期の売上高では「賃貸事業」が82.0%を占める主力事業となっています。「開発事業」が14.4%で残りが「シルバー事業」「ホテルリゾート事業」となります。
まず今回の退去要請によって主力事業である「賃貸事業」に影響が出るのは2019年4月以降となります。つまり2019年3月期決算見通しには織り込まれていません。立ち退きに関しても2019年3月までを要求していますが、この時期は賃貸及び引越しの繁忙期であり、希望通りに進めるには困難でしょう。入居者も立退料交渉などで、すんなりと退去するとは考えにくいです。
また今回の一連の報道を受けて、レオパレス物件に入居しようと思う人は大きく減少するでしょう。もちろん家賃を大きく下げれば同じくらいの入居率は維持できるかもしれませんが、イメージ悪化の影響は大きく、アパート補修終了後も5%~10%は売上が落ちる可能性が高そうです。
アパート建築は激減?
レオパレスの「開発事業」はアパートの建築ですが、2018年3月期の建築請負受注は872棟となっており、ここ数年は900棟前後で推移しています。ただ今後は今回の違法建築問題を受けて、レオパレスでアパートを建築しようと思う人は大きく減少することが予想されます。どこまで落ち込むかはわかりませんが、収益的には相当厳しい状況になることでしょう。
レオパレスの2018年3月期決算発表の資料を見ると、「開発事業」の売上高は概ね横ばいなのに対して、営業利益は大きく減少し、2019年3月期計画は2017年3月期実績の約38%となっています。これは今までは「界壁」を作らずに高い利益率を出せていましたが、問題が公になった事で危機を感じた経営陣が、利益率を下げたということなのでしょうか?
引用:レオパレス21決算資料
サブリースの訴訟問題
レオパレスはアパートオーナーに対して、最長30年のサブリース(家賃保証)制度を提案することで、工事請負件数を伸ばしてきました。オーナーは30年間の家賃が保証されていると信じていたのですが、レオパレスはサブリース契約を一方的に解除して、多くの訴訟を抱えています。
サブリース契約では借り手であるレオパレスの方が有利な条件となっており、一方的に家賃の減額や契約の解除を申し出ることができます。ただアパートオーナーに対しては営業時に30年間は家賃が保証されたような発言をしたことで、大きな問題となっています。
レオパレスはリーマンショックによって業績が大きく傾きましたが、この際に社内では10年以上のサブリース契約は家賃の大幅減額か契約解除、10年以内のサブリース契約も家賃の大幅減額するよう指示が出たとのことです。これは「終了プロジェクト」と呼ばれていたようで、「ガイアの夜明け」でも報道されていました。
今後このサブリースの訴訟対応によって、大きな費用が発生する可能性があります。
公募増資の損害賠償
レオパレスは2012年にアパートオーナーからの裁判で、「界壁」が無い物件であることを指摘されていました。この際には裁判記録に違法建築と残ることがまずいから、和解案を100%飲んで和解金の支払いを行っており、この時には経営陣は問題を把握していた可能性が高いです。
にもかかわらず、レオパレスは2013年11月に320億円規模の公募増資を行っています。重要なインサイダー情報を隠蔽して資金調達を行っていた可能性が高く、この事実を知った投資家からは損害賠償請求を求められる可能性があります。
まとめ
レオパレスは多くの問題案件を抱えており、今後も業績が悪化する可能性はありそうです。特に業績に影響を及ぼしそうなのは2019年4月以降であり、来期の決算見通しが発表されていない中ではありますが、2期連続赤字となる可能性も否定できません。
短期的にレオパレスが倒産することはないとは思いますが、引き続き注視していきたいと思います。
<こんな記事も読まれています>
⇒【レオパレス建築基準法違反問題まとめ】
⇒【「界壁」が無いことの問題点】
⇒【レオパレス赤字拡大の株価への影響】
⇒【スルガ銀行倒産・静岡銀行と合併?】
⇒【TATERU倒産の可能性を分析】
⇒【「かぼちゃの馬車」問題を解説】
⇒【元FC東京・平山選手「かぼちゃの馬車」被害に】
⇒【TATERUと本田圭佑の関係は?】
この記事へのコメントはありません。