スルガ銀行のシェアハウス不正融資問題が連日報道されており、2018年4月には金融庁が立ち入り調査を行うまでに発展しました。
不動産投資をやっていない人は何が問題なのかわからない人も多いと思います。
ここではスルガ銀行の不動産融資の特徴や今回の問題点をみていきましょう。
目次
スルガ銀行の不動産融資の特徴とは?サラリーマン投資家への積極融資で業績を拡大。
スルガ銀行はここ数年サラリーマン向けの不動産融資を積極的に行ってきました。
スルガ銀行の不動産融資の特徴としては以下のものがありました。
① 融資のエリアは全国
銀行の不動産融資は通常、支店があるエリアに限られるため、日本全国で融資を行うのはメガバンクが中心となりますが、スルガ銀行は他行よりも積極的に全国に融資を行いました。スルガ銀行の本社は静岡県沼津市で国内の店舗数は122店舗(インターネット支店を除く、2017年4月1日時点)、うち静岡県内が66店舗、神奈川県内が39店舗と2県で全体の約86%を占めるため、店舗所在地から考えると全国への融資は異例です。
② 積算評価より収益還元法を重視
不動産価値の主な評価方法には、土地の価格と建物の価値の積み上げで評価する積算評価と、不動産が生み出す収益で評価する収益還元法があります。銀行により評価の方法は異なりますが、スルガ銀行は他行より収益還元法重視し、不動産の利回りによる融資を積極的に行ってきました。
③ 融資審査のスピードが他行に比べて早い
銀行が不動産融資の審査を行うには、物件の詳細情報の確認や個人の収入や与信情報の確認のため、通常1ヶ月はかかります。スルガ銀行は審査のスピードが異常に早く、近年競争の激しかった不動産投資においては重要な存在でした。
④ 融資期間が長い
不動産には法定耐用年数という利用可能とされる期間が決まっていて、木造は22年、鉄筋コンクリート(RC)は47年となっています。多くの金融機関は法定耐用年数を超える期間の融資は出さないのですが、スルガ銀行は独自のルールで法定耐用年数を超えて、最大30年間の長期融資を行っていました。
⑤ 金利が高い
不動産投資の一般的な金利は2~3%程度と住宅ローン金利と比べると高いですが、スルガ銀行の金利は通常4.5%と高い部類でした。最近は首都圏物件であれば3.5%で融資していたケースも多く、今回のシェアハウス融資は3.5%での融資が大半だったようです。
⑥ フルローン・オーバーローンが可能
不動産投資では物件価格に加えて、不動産取得税などの諸経費(物件価格の7%程度)がかかり、不動産価格満額の融資をフルローン、不動産価格に加えて諸経費までカバーする金額の融資をオーバーローンといいます。銀行は貸倒リスクを軽減するために10%~30%程度の頭金を求めるのが一般的で、スルガ銀行も10%の頭金を求めていました。しかしながら書類の改ざんにより、ほとんどの融資でスルガ銀行はオーバーローンを行っていました。
シェアハウス「かぼちゃの馬車」問題の詳細とは?サブリースの家賃収入がなくなり、投資家が銀行ローン返済できない事態に。
今回スルガ銀行が融資を行っていたのが、スマートデイズ社が運営する女性専用のシェアハウス「かぼちゃの馬車」で、700人のサラリーマン投資家に合計で1,000億円以上の融資を行ったと言われています。
スマートデイズ社が投資家から「かぼちゃの馬車」を融資期間である30年間借り上げして、家賃収入を保証するというサブリースという仕組みを提供していました。
しかしながら「かぼちゃの馬車」の入居率は低く、またサブリースで保証していた家賃も相場より割高であったため、スマートデイズ社は投資家への家賃の支払いできなくなり、サブリース契約を無効としました。
そのため、投資家は想定していた家賃収入が得られず、スルガ銀行への返済ができない事態となり今回の問題に発展しています。
融資金額が1億円、融資期間30年、金利3.5%の元利均等方式(毎月の支払額が一定)ですと月々の返済額は約45万円と、一般的なサラリーマンが給与所得から返済できる金額ではありません。
また投資家は積算評価(土地と建物の価値合計)を大幅に上回る高い金額で購入していたため、不動産を売却しても融資金額を返済することは事実上不可能な状況です。
まとめ
今回の問題はサブリース契約を信じて割高で利回りの低い、かつシェアハウスという運営の難易度の高い物件を買ってしまったことにはじまります。
投資は自己責任ですので、不動産会社がすすめてきた、銀行が融資をしてくれたから問題ないとは思わず、しっかり自分で確かめる必要があります。
株式投資に例えるなら、全くわけのわからない非上場株式を証券会社にすすめられ、銀行融資を使ってレバレッジ100倍で買うようなものです。
今回の問題は他人事とは思わず、教訓として活かしていきましょう。
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