武田薬品工業は2018年5月8日にアイルランドの製薬会社であるシャイアーを460億ポンド(約6.8兆円)で買収することを発表しました。
これは日本企業によるM&Aでは2016年ソフトバンクがイギリスのアーム・ホールディングスを約3.3兆円を超す、過去最大の案件となります。
武田の株は配当利回りが高く注目している人も多いため、今回の武田の買収の詳細と株価への影響についてみていきましょう。
目次
武田のシャイアー買収の目的や狙いとは?売上高世界トップ10へ。
武田はシャイアーの買収を戦略的な補完と位置付け、収益力と研究開発力を強化できるとしています。
研究開発費は武田単独の年間3,000億円から5,000億円に拡大し、また武田の研究領域になかった希少疾患と血液製剤という2つが加わり、6領域に重点を置く戦略です。
シャイアーの買収により、バランスシートを強固なものとし、利益水準は3倍になると見込んでいます。
シャイアーの地域別売上高は70%近くがアメリカであり、買収によってアメリカでの売上高を大きく伸ばすこととなります。
また買収により武田は初めて売上高世界トップ10の製薬会社に入ることになります。
武田のシャイアー買収の資金調達方法とは?融資と新株発行。ムーディーズは格下げへ。
武田はシャイアーの株主に対してシャイアー株1株につき以下を合意しています。
① 30.33ドルの現金支払い
② 武田株0.839あるいは武田ADR(米国預託株式)1.678の受領
現金支払いに対する資金調達としては、武田はJPモルガンチェース、三井住友銀行、三菱UFJ銀行の3行から最大で308.5億ドル(約3兆3,600億円)の借り入れを行うことを発表しました。
借入金額のうち、35億ドル(約3,800億円)については融資実行後90日後、残りの金額については融資実行後364日後の返済となっており、その間に武田は長期融資への切り替えや社債の発行などを行う予定となっています。
武田の現在の有利子負債は約1兆円、シャイアーの有利子負債と合算すると約3兆円、それに加えて今回の融資となり、格付け会社のムーディーズは巨額買収を嫌気して武田の格付けをA2へと一段階格下げしました。
武田のシャイアー買収による株価への影響は?チャートは完全に下降トレンドを形成。
武田の株価チャートをみていきましょう。
1月10日に6,693円の高値を付けた後、シャイアー買収の報道が出てから一気に下落し、4月25日には4,398円の安値を付けています。
下落率は約34%で、今回の巨額買収に対する市場の懸念がうかがえます。
10日、25日、75日移動平均線は全て下向きで、短期線が長期線を全てデッドクロスしているため、綺麗な下降トレンドとなっています。
武田は配当が年間180円と多く人気の銘柄で、株価下落により2018年5月9日終値時点で配当利回りは約4%となっています。
配当利回りの高さや急激な下落により一時的な反発や、買い支えられることもあるかもしれませんが、チャート的には完全に下降トレンドに入っており、株価を戻すには買収の成果が具体的に出てこないと難しいかもしれません。
⇒【移動平均線の詳細を解説】
まとめ
今回の巨額買収は多くの注目を集めており、今後の動向からも目が離せません。
新株発行により武田の既存株主は、統合完了後の約50%を保有する形となる予定で、株式の希薄化懸念に対しては、従来の配当である年間180円を維持し、希薄以上に利益を上げていくと発表しています。
武田が買収の結果を残し、株価を戻せるのか注目です。
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